2015年5月30日土曜日

NPOについて(その1)

夏はNPOに関するリサーチをしようと思っていて、ようやく論文を漁り、読み始めた。早いところ仮説と研究テーマを設定しなくちゃいけないものの、ここに時間がかかるなー。現状想定しているのは、ボランティアマネジメントを、Psychological Contractの観点を取り入れて、効率的・効果的にボランティアの力を活用していきましょう、というもの。これを説明するまでに時間がかかりそうだから、何回かに分けて書いていこうと思う。今日はNPOの変遷について。
NPOに限らず、組織が成果を生み出すためには、人材や投資といったInputが必要で、それらのリソースをどのように効率的に活用するかでOutputが出てくる。企業の場合、効率性はROAの分解式ででるものの、NPOの場合はそれができない。というのも、NPOの評価指標はお金ではなく、Missionに紐尽くサービスの質・回数になるから、効率の評価が難しい。

アメリカに関しても、NPOのInputは限られていて、資金と人材をどうやって獲得するかが非常に重要な問題になってくる。人材も、NPO間の獲得競争が激化してきている。ボランティア人材の獲得も実はとても大変になってきている。

この背景には、一つは、NPOの組織としての変質が存在する。日本でも変化が生まれつつあるが、アメリカでも、NPOの組織体質に対する疑問から、政府のNPOに対するGrantの要件が、厳しくなり始めた(前は比較的緩い)。厳しくなったというのは、NPOのマネジメントに対して、企業の会計基準に近い透明性をNPOに求めはじめたことによる。基準も厳しくなれば、金額面でも縮小したため、NPO業界内でのGrant争奪は当然激しさを増し、NPOは効率的な経営を迫られるようになる。結果として、NPOの組織体質は、従前の「いいことやってるから、お金の使い方は二の次!」という(言葉は悪いけど)自己満足なものから、より資金提供者に対して説明の付く、Accountabilityを持った組織に徐々に変質していくケースが多くなった。

これには、良い面だけではなく、悪い面もある。効率化のため、受益者のサービスの質が損なわれたり、受益者へのサービスが打ち切られたりするケースが見られた。また、NPOがProfessional化することで、ボランティアに求める専門性が高まり、これまでボランティアとして働いていた人材がNPOの要件を満たさない事例が増えることに。加えて、企業体質になることで、NPOのミッションに焦点を当てた経営から、より資金面に注力する傾向が強まり、本来の特徴が薄れることに。

もう一つの背景は、ボランティア自身の変化が挙げられる。まずは価値観。従来のボランティア(ベビーブーマーとかそれよりも前の世代)は、コミュニティに属していることを重視し、それゆえにNPOに奉仕していた。だからこそ、長期的で、NPOと濃い関わりをしていた。それが、世代の変化によって、ボランティアへの関わり方は、より散発的・一時的なものになっている。これは、ボランティアがより個人化したことで、動機もより具体化した事による。例えば、ボランティアを通じてスキルを伸ばしたい、だったり、新しい経験をしたい、だったり。他にも、ボランティアの関心が政治的な団体運動や社会階層に共通した問題に取組むものから、より、文化的なものや生活の質に焦点を当てた活動にうつったことも影響している。前者の方が後者よりも組織内・コミュニティ内に、より一体感やコミットメントが求められるし、時間軸も通常長い。もう一つは、時間。純粋に、アメリカ人が更に働くようになったことで、家庭のことにそもそも時間を割くのが大変になり、ボランティアをしていえられる時間的余裕が減りつつあることによる。家族サービス前にボランティアしてたら奥さんに怒られるよなぁ、一般的に考えたら...

ボランティアのNPOへの関わり方が個人化したこと、関わる期間が短期化したことで、NPOは一層ボランティアの確保・リテンションに迫られるようになった。

こうしてNPOとボランティア双方の変質が、NPO間のボランティア人材獲得をより激しくすることになったし、ボランティアをマネジメントしていくことも複雑化していくことになった。

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